感想の箱庭

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【映画】ミッドサマー(R15版)を観て祝祭を挙げたオタク

公開前から気になっていた『ミッドサマー』

 

最近では新たなシーンを追加したディレクターズカット版(R18)も公開されてTwitterでは謎のドラマTRICKネタが上がりまくるという謎盛り上がりをしているので名前だけ知ってるという方も多いかもしれない。

 

私は前に先行上映の感想か何かを観て観に行きたいとずっと思っていたのだが、体調崩すわあつまれどうぶつの森に時間を割かれて家から出れないわ色々とありずっと行けていなかった。

それでようやく時間が出来たので観に行ってきた。

 

行った映画館は先述したディレクターズカット版もやっているところで、悩んだのだが「とりあえず先にR15版観て大丈夫そうならディレクターズカット版を観て違いを観ようかな」と思いタイトルの通りR15版の普通の方を見てきた。年齢制限掛かっているのにR15版で普通と表記するのはどうなのだろうか……

 

この映画は結構ネタバレ観ちゃうと面白さが半減な部分があるのでこれから先は本当に観てからにしてもらいたい。

観てない人は

「これから祭りに参加してくる」とTwitterにでも書いてから映画を観て欲しい。いいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒頭、薄暗く色味が少ない夜のシーンからスタート。

ここは、この後にある儀式などの色彩と白夜という陽が落ちない日を退避させるためじゃないかなと勝手に思ったりした。

 

情緒不安定な主人公のダニー、ダニーと縁が切りたい彼氏のクリスチャン。いつ別れ話が出てもおかしくないこの状況。嫌な雰囲気が流れる。

双極性障害を持つ妹から不穏なメッセージが届き不安なダニーに対して「何も起きないって」と軽く電話で遇らうクリスチャン。そんなクリスチャンに対しての愚痴にも似た不安を女友達に電話しているダニーもまた抗うつ剤に似た薬を飲んでいる。

私も似たような経験があるから分かるのだけど、本当この映画はリアルにダニーの鬱症状を鮮明に映し出していると思う。この後の妹と両親の一家心中のことを受けた際の大袈裟にも見える程の大声出しての号泣やパーティに行くところ、そしてスウェーデンに行くという事を言わなかったクリスチャンに対しての言動。全てダニーが精神が不安定で抑うつ的なことが描かれている。あれ?私かな?と思うくらいには本当にリアルだった。

 

ダニーも結局スウェーデンに飛び立つことになり、クリスチャンとマークとジョシュ、そしてスウェーデン人で例の集落の出身者かつその集落へ行こうと誘った張本人のペレの5人で例の集落へと行くことになるのだが

 

私は観ていた最初は

ペレが「俺の出身地古典的な儀式まだやってるから見に来ないか?」と儀式や村のことは一般常識とは外れている事を理解してその事を面白半分で勧めたのかと思っていたのだが、

 

進むに連れて

ペレは故意的に彼らを集落に呼び自らの意志で彼らを生贄に捧げようとしていた事が見えてきて、

 

結局ペレは一体どこまでこのカルトに染まっているのか分からなくなってきた

 

集落近くに着くとまず最初に薬物をキメるわけだけれども、まぁ合法なのかは不明だが明らかに洗脳に近い何かだとは思う。

この作品は定期的に薬物入ってるんだろうなというお茶や食事などが出されるわけで、背景や色々と不可思議な現象が起きていく。だがそれはあくまで幻覚であり、それを分かっている一行はその変なところは一切突っ込まない。

この作品、儀式が行われるところなど花が綺麗で食事とかも色とりどりなんだが、飲み物が違法性を感じるものがあり

本当にスクリーンに映っているものは現実にその色彩なのかが分からない。

 

後に行われる儀式で目の前で72歳を迎えた老人が死ぬシーンを見た瞬間、音が聴き取りにくくなり篭った感じの音響になったり映像が不自然になったりと、結構主人公のダニーの主観がこの映像には大きく反映されている。話の終盤にはダニーはこのカルトに心を開き始めていてダニーがいるもしくはダニー自身が見ているであろうシーンは必ず綺麗な描写(謎の幻覚については後述)なのだがクリスチャンは優れない顔をしていて、メイクイーンが決まった後の食事シーンではハエが飛んでいる描写もある。

 

本当にその食事は美味しそうなものなのか?

はたまた薬物が魅せる幻覚の一種なのか?

 

真相は闇の中である。

 

 

まぁカルトな儀式については色々ネットでも出ているだろうし省略していくのだが、基本的にこの映画は

  • 宗教として集落の住人は酷いことをしていく(本人達にとっては当たり前)
  • 別の所から来た主人公の周りの人物は自分の信念を曲げず異教の集落の人々に馴染もうとはせずいつもと変わらない振る舞いをする
  • その行動が原因で集落の地雷を踏む
  • 生贄にされる

 

というパターンが何度か繰り返される

 

最初の犠牲者は儀式を中断しようと割り込んだり帰ろうとしてしまい、マークは彼らには重要な物(故人たちと繋がるための朽ち木)に立ちションしてしまい、ジョシュは彼らの聖書を無断で写真を撮った。

 

『郷に入れば郷に従え』が一切出来ない彼らは一切このカルトに対して好意的には接していないし自分達のしたいようにしている。ジョシュは一見論文の為に好意的に接しているようにも見えるが、実際は論文の為という自分の事の為にしか動いていないのだ。

 

ただクリスチャンだけはこのパターンでは例外だ。

クリスチャンはダニーのことを雑に扱っていたり、元々スウェーデンでは羽を伸ばして女を漁ろうとしてた雰囲気があったり、ジョシュの論文をパクろうとしたりと本当人として最低な描かれ方をしている。(あくまでダニーの主観で描かれている為本来そういった部分以外も多くあるのだろうが今作では殆どクズな描かれ方をされている)

だが案外クリスチャンはカルトには嫌悪感を見せながらも彼らの地雷を踏まないように行動している。こういうところは器用なのだ。

だがそんなクリスチャンも犠牲になる。カルトの中の一人の少女に恋心を抱かれるのだ。

 

この寝取り案件に対してエロ同人漫画だったら喜ぶのかもしれないが、ここはスウェーデンの片田舎のカルト集落。そんなオタクにおいしい展開を見せるわけがない。

 

ここで宗教特有の性行為に対する考えが出てくる。

ここでは性行為をしていいかの許可(ペレ曰く性行為出来るライセンス)をカルトのトップが決めて、女性が儀式を男性に施してその後に性行為へとなる。

その儀式がヤバいんだ。

 

  • まずルーン文字の書いた木の枝を相手のベッドの下に隠す(まだわかる)
  • 彼のために自分の陰毛を入れた食事と血(多分宗教画的に経血か処女膜)を入れた飲み物を作り食事に出す(ん?)
  • 相手が食す(二重の意味でマズいですよ!!)
  • 恋が実る(んなアホな!!!!!!!!!)

 

序盤に「この絵(宗教画的な)恋愛についてらしいよー」「へー」みたいな軽いノリでその絵が出るのだけど、実際に寝取る子がやってマジかよって感じ。私はこういった性癖はないし別に嫌悪とかはないのだけど、嫌いな人はマジで嫌いそうな描写だと思う。

 

少女はカルトのトップにライセンスを渡されて、それでカルトぐるみでクリスチャンと彼女を性行為に導こうとあの手この手で後押しする。と言っても甘酸っぱい恋愛ストーリーよろしくみたいな「あの子と二人っきりにさせちゃお!」とか上司がご子息を部下によろしくみたいな「あの子についてどう思うんだね」みたいな後押しではない。そう、薬物でクリスチャンを酩酊状態にさせる。カルトなんだから常識通じるわけないだろ。謎ドリンクや、謎の催眠掛けるみたいな手鳴らしで視界を歪ませたりとやりたい放題。まぁジョシュやマークがそうやってたんだ。相手もやりたい放題やるさ。

そんでTwitterランドでよく流れていた例の

世界で一番入りたくないSEXしないと出れない部屋

が出てくるわけだ。本当、マジで世界で一番だと思う。中に入る前にもう一度クリスチャンは謎の煙を吸わされて性的興奮を高めさせられる。薄暗い部屋で待ち構えていたものとは

 

  • 全裸の女性達が体を左右に揺らしながら全裸で合唱
  • 真ん中には例の少女が花のベッドで全裸待機
  • 股を広げて誘惑
  • 性行為が始まり興奮が高まると少女が女性に手を伸ばす
  • 女性は少女の手を取り祈りながら歌う
  • クリスチャンにも歌う
  • とにかくみんなに見られながらはよイけと言わんばかりに歌われる
  • 射精すると少女が「赤ちゃんを感じるゥ!!」
  • 大歓声

 

大地獄じゃ!!!

 

ちなみに薄暗いからぼんやりと裸体は全部見れる。あと性行為には腰部分がモザイクになる。

豆知識なのだが、性行為が直で描写されるとR18に跳ね上がるのだとか。

 

賢者タイムになりクリスチャンは走り去って逃げ結局は薬物決めさせられて体が動かなくなってしまう。カルト的には異文化の第三者の遺伝子が欲しいだけなので問題はない。

 

 

一方主人公のダニーはどうなのだろうか。

ダニーは基本的に依存気質で地雷を踏まないクリスチャンと行動してたのでダニーも地雷は踏んでいない。問題があったとすればショッキングな儀式を見たり薬物でバッドトリップ(悪い方向へ向かう幻覚)を見て自分でぐしゃぐしゃとなるだけで別に他人には迷惑は掛けていない。ダニーにとってはの話でありクリスチャンはもしかしたら迷惑だと思っていたかもしれない。

家族を失い天涯孤独になってしまったダニーは無意識的にカルトが「私達は家族」と言っているのを羨ましく思っていたのかもしれない。大勢でいるのに孤独に感じてしまうダニー。共感できる人もいるかもしれない。少なくとも私はそういう経験があるので分かる。

 

ダニーは最初こそバッドトリップをするのだけど、だんだんとグッドトリップをしていくようになっていく。それの最終形態がメイクイーンを決める儀式だろう。

ダニーはこの儀式のうちにいつの間にか話せなかったスウェーデン語を話せるようになっていく。そしてスウェーデン語も理解できるようになり喜びをカルトの少女と共有していきメイクイーンという少女のトップへとなる。

その時に掛けられた花冠、めっちゃ花が呼吸していて気持ち悪い印象を受けた。一つの花のおしべ(またはめしべ)がある部分が呼吸しているかのような動きをしている。それがだんだんと他の花冠にも見え始め、メイクイーンが座る草で出来ている椅子もまるで草がダニーを導くかのような動きをして手に絡まってくるようになる。

ここまで来るとダニーの幻覚なのだとなんとなく分かってくるのだけど、ダニーはそれを寧ろ受け入れてメイクイーンになることで何か抑うつ的にしていた心の殻を破ったようにも思える。

 

まぁその後すぐに一応恋人のクリスチャンが入ってしまったSEX部屋を覗いてしまい嫌悪感からか吐いて泣きじゃくってしまう。それを一緒に踊った仲間の少女達が同調して泣き始める。ここからは予告であったインパクトあるシーンに繋がる訳だけど、本当コールアンドレスポンスかなってくらい真似して返して一緒に泣き始める。冒頭のダニーがクリスチャンに電話した際にダニーが本当にして欲しかったのは同調だったのかもしれないと思うとこのシーンはダニーにとって悲しい時に一緒にそばにいてくれるのはクリスチャンではなくこのカルトの皆つまり“家族”なのだと気づいたのかもしれない。

 

 

そして最後、生贄の最後の一人をメイクイーンが決めることになりクリスチャンが生贄へとなる。クリスチャンは愚者として内臓をくり抜かれた熊の中に縫い合わされて他の生贄と共に燃やされる。

その中には自ら志願して生贄になることを決めた生きた人がいてその苦痛な叫び声が聞こえると、外にいたカルトの皆叫び出す。

正直ここのシーンはカルトの皆は同調して悲しんで叫んでいるのか、生贄のお陰でこの集落はまた浄化されたと喜んで叫んでいるのかが分からなかった。

 

そして最後ダニーの笑顔で終了する。

 

ダニーにとっては新たな“家族”を手に入れて、裏切られたクリスチャンもいなくなり、新たな人生が幕を開けることに喜びを得たのだとするのならば

このミッドサマーはハッピーエンドなのだと思う。

この映画はあくまでダニーの主観の映画なのだ。だからダニーが周りから見てどう見えていてもダニーが喜び笑顔を素直に出せたのならこれはハッピーエンドなのだ。

 

 

 

 

 

                            総合評価

                    100点満点中85点

 

よかった点は

  • 色彩が綺麗
  • ダニーの抑うつ状態のリアルさ
  • 考察要素が多い

 

減点理由は

  • ゴアが突然に集中して1箇所責めなため結局リアリティあって
  • 正直Twitterランドで皆が阿鼻叫喚するほどの狂気はそこまで感じなかった

 

総評すると

「郷に入れば郷に従え」を的確に描いた抑うつ少女の心の拠り所

 

 

依存体質なダニーの性格的にこのカルトは結構決まりがきっちりしているのでダニーは馴染めるのかもしれない。

いるよね、指示がなきゃ駄目な人って。

 

次の休みにまだディレクターズカット版やってたら行きたい気もするが、そこまで最高!!ってほどハマれてはいないので悩みどころではある。もしディレクターズカット版を見た場合は今回との相違点を纏めたいと思う。

 

では次回まで皆さまお元気で